
戦う・逃げる~動いてなんとかする!!
交感神経系は、何か刺激があったときに、身体を動かそうとする神経系です。
何か嬉しくてたまらないことがあった時などは、「とびあがるほど」「踊りだしたくなるほど」といった表現があるように、自然と身体が興奮して動き出したくなりますよね。また、誰かと喧嘩をしたときなども、怒りが込み上げてきたり、その場を立ち去りたくなったりします。このような時には、身体を動かすぞ!という動きが体の中で急速に始まります。
ちょっと、シマウマがのんびり草を食べているところにライオンのがやってきたのを想像してみてください。シマウマがライオンの気配を察知したその瞬間、シマウマの身体の中では、心拍が上がってからだ中に血液を巡らせ、血管を収縮させます。汗が出てきて筋肉は固くなります。これらは、ライオンの「気配」の段階で、勝手に身体が反応しだします。いち早く危険を察知し、逃げる方向を定めるために遠くを見ようと瞳孔が開きます。「あ、ライオンだ!逃げなきゃ!」と意識する前に、意識の前の感覚の段階で自分でも分からないうちに、脳が反応して起こります。ポージェス博士は、この自分にとっての危険を判断する感覚をニューロセプションと名付けました。
交感神経系の動きは、ライオンに襲われたシマウマのように、自分にとっての危険にすぐさま対応しようとする身体の自然な働きです。危険な状態を戦うこと、逃げることで何とか自分を守ろう!!という大切な反応です。命の危険ほど大きな危険でなくても、例えば、泥棒に自分の財布をとられた!といった自分の財産の侵害や、悪口を言われたなどの心への侵害などでも、やはり自分にとっては「危険」な状態です。人は、動物とは異なり、頭でたくさん考える生き物なので、そのはっきり怒りを表現したい!や逃げたい!といった自然な衝動をそのまま出すことをしない、出来ないことが多いです。そうすると、身体の中に残った興奮は治まることなく、続いてしまいます。また、いったん落ち着いても小さな刺激で興奮しやすくなります。さらに、命の危険から逃れる使命をもった交感神経系は素早く働き最優先されるため、よりゆっくりとした働きの考える力は後回しとなり、落ち着いている時よりもその力は落ちてしまいます。この状態が続くと身体は疲れてしまいますし、警戒状態が続くので必要以上に不安になったりソワソワしたりと日常生活に支障が出ることもあります。
交感神経系は、後から出てくる腹側迷走神経系とブレンドした形でも働きます。このときは、楽しい・適切な範囲内の興奮です。腹側迷走神経系の働く他者との関係性の中で安全と安心の中で、小さなスリルのようなものを感じながら楽しむような穏やかな緊張した状態です。鬼ごっこなどの遊びやスポーツをイメージしてもらうと分かりやすいでしょう。いわゆる、ゾーンに入るという状態がこれだという人もいます。思考もすっきりと働き、身体もスムーズに軽やかに動く状態です。興奮を気持ちよく楽しんだ後は、自然と穏やかな状態に戻っていきます。
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